22人が本棚に入れています
本棚に追加
/306ページ
背後の俺に警戒する様子がないユーリスに杖を向けて魔法を唱えようとしたときだった。
倒れている男が手にしていた煙玉が突然音をたてて爆発する。
「ゴホ、ゴホッ……これは、さっきまでとは違う……しびれ玉か」
「ゴホッ……いや、催涙弾だ……あまり吸い込むと良くないぞ!」
再び視界が白く染まると、先ほどまでの白い霧状の煙玉とはまるで違った。
咽ながら目の痛みから、焼けるような感覚に全身が悲鳴をあげる。
少し前に受けた電撃魔法でさらに思考が回らなくなるのを感じて、ユーリスの記憶を消すどころじゃなくなった。
このままじゃ、この場で意識を失う最悪な事態も予想できる。任務のことを知っているヘルへニールが、直ぐに動くとも限らない。
万が一にでもユーリスのような非魔法使いに先に見つけられたら困る。
すでに、出口の転移魔具がある場所の目星はついていた。
催涙弾と言うユーリスはなにかしらの対策を知っているようで、なにか叫んでいる。
そもそも、そんな単語も初めて聞いた。
最初のコメントを投稿しよう!