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なぜ、中等部生徒のみだったのか疑問が残る。高等部生徒だと、抵抗される恐れがあったからか?
――やはり、犯人は魔法生物の類ではなく、魔法使い……。
耳に響き渡る警報のような音と連動して、学校内にある魔法の明かりが一斉に灯る。
それは、就寝中だった事態を知らない残された中等部生徒や、高等部生徒がいる寮の明かりもだ。
直ぐに緊急事態を把握して騒ぎだす、生徒の悲鳴に似た声が校内に響き始め、わしは思わず両手で顔をおおう。
「――すまない、原因の追及叶わず、失った中等部の生徒諸君。捜索にあたってくれた誇り高き教師たち。……不甲斐ないわしを、許してくれ」
緊急事態を発動したことで、校長室から慌ただしく残った教師たちが散り散りとなって、生徒のもとへ向かっていった。
わしは、床に替えのローブを敷いて、横たわらせた中等部女子生徒の亡骸に視線をさまよわせ、右手に持つ杖を強く握りしめる。
厚い雲で覆われた、寒空の中……。
わしの腕には、ローブで包んだ、冷たくなった中等部女子生徒の亡骸がある。
魔法のホウキにまたがり空に浮かぶ、わしたちは、灯りが消えた島を一望する。
そして上空から、暗闇に染まって映るオブシディアン魔法学校を放棄して、飛び立った――。
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