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だが、電撃魔法による後遺症か、耳に届く声も遠く聞こえて分からないまま視界も奪われる。
先ほどの戦いよりも悪い状況に俺の頭の中で警鐘が鳴り響いた。
無事に帰ると約束した2人の顔が浮かぶ。
魔法界が警戒している非魔法使いの街で意識を失うわけにはいかない。
すでに行方不明の魔法使いが複数人いる上に、俺を襲ったコイツらの仲間もいるはずだ……。
微かに耳に届くユーリスを放置して俺は、口と鼻を押さえ、視覚に頼らず目を瞑る。
そして、感覚を研ぎ澄まして一歩ずつ目的の場所に足を摺るように前進する。
助手の女が放った煙玉と違い、辺り一帯が晴れる様子もなく、肺に到達したのか喉の痛みに、息苦しさで胸を押さえた。
「――ゴホッ、ゴホッ……ネージュ、リベルテ……ッ」
その直後、脳に直接届く声が響いた。
『――ル……さ――!』
微かにネージュの声が聞こえてくる。
まさか、出口である転移魔具が近いことで、念話魔法が届くのか……?
入口じゃ、俺の声も届かなかったのに……。
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