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「飽きたよ」
起きる、食べる、そして寝る。ーーこんな生活もうたくさんだ。
「僕たちはいったい何のために生きてるの?」
食事以外に楽しいことといえば、家族の団欒や友達と会うことだった。
「木の葉でもっと楽しいことしたいよ」
「ならぬ。生活が豊かになればその分失うものが出てくる」
「そんなの嘘だ。生活は豊かなほうがいい」
「家族の団欒。知人との時間。これに勝る幸せなど存在しない」
十歳の彼には理解できない言葉であった。
今日も変わらない目覚め。食べ物を獲りに行く時間だ。日々の生活に嫌気がさした彼は、こっそりと家族の元を離れ小さな探検をすることにした。
いつもの狩り場を離れ茂みを抜けると、山のふもとにはきれいに整列した野菜が植わっているのが見えた。周囲には大きな何かが乱立し、そこからいくつかの煙と、空腹を加速させるいい匂いを流していた。初めて見る景色にそれらがいったい何なのか想像もつかない。代り映えのない生活に飽き飽きしていた彼は興味を駆り立てられ山をおりて行った。
「なんだ……ここは……」
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