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その女は、犬小屋で暮らしていた。
どういうことかと言うと、都内の邸宅にある寝室に超大型犬用の犬小屋を置いて、中に枕やら布団やらを敷き、そこで寝起きしていたのだ。
それだけじゃない。女は、入浴時以外には犬用の首輪を付けていたらしい。
たまにいるな……。パンクだかなんだか分からないが、ファッションとして首輪を付けている連中が……。
しかし、その女の場合、ファッション用に作られたお洒落な首輪などではなく、本物の犬の首輪を付けていたのだ……。
その理由はとてもシンプルで、「犬になりたかった」だそうだ……。
私の友人が女に、何故犬になりたいのか聞いてみたことがあるらしい。
その理由もとてもシンプル。
「恋い慕っていた男が犬好きだったから」……。
しかし、いくら好きな男が犬好きであっても、自分まで犬になりきるとは普通考えまい……。その意味で、その女は常軌を逸した空想を行動に変えた人物だと言うことができるであろう。
女はある日、恋い慕っていた男というのに聞いてみたらしいのだ。
「✕✕さんは、どんな女性が好きなんですか?」
と……。
男は答えた。
「犬みたいな女性が好きかな」と。
無論、男が言う「犬みたい」という形容詞は、人懐っこくて、喜怒哀楽がはっきりした女性だという意味であろう。しかし、女はその言葉を盲目的に信じ込んでしまった……。
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