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①風にゆられて
「ねえ、柚助だけどさあ」
「あ?何?」
突然妻に話しかけられる自分。
「やっぱちょっと調子悪いみたいなんだよね。学校休ませようと思って」
「あ。そ」
って自分が今一つ素っ気ないのには訳がある。
自分は自宅のトイレの中で座っているのだった。自分が男である限り、トイレに座っていることにはある意味がある。
そこに、洗濯物を洗濯機に入れている妻が話しかけているのだ。トイレと洗濯場はすぐ隣。と言うか、自分は今、まさに、真っ最中の、その。
あ、そだ。
こんな風景を自分は以前、見たことがある。
もう四半世紀も前の話。
中国の南方。雲南省は昆明からバスで半日走ったところにある町、大理。
大理石の産地、大理。
自分は留学期間中の休みを利用して、昆明から旅に出ていたのでした。
当時、中国では珍しい海外からのバックパッカーの集まるこの町では、純粋な旅行客に混じって、白煙漂わす極めて不純粋な旅行者も混じっていた。まあ、町もそう言ったことに関しては、当時はそんなにうるさくなかったみたい。
そこの安宿の共同便所。
話には聞いていたが初めて見たニーハオトイレ。
いくら中国だからって、どこにだってニーハオトイレがあるわけじゃない。
隣通しが、背の低いベニヤで仕切られお互いの顔が見える。ニーハオできる。
それを初めて見て、実際にニーハオしながら用を足していた現地の方のおおらかさに触れ、いろいろ思うところあり。そうだ。
一曲作ってみたのでした。
鼻歌で作った。
タイトルは「風にゆられて」
そんなことを思い出し。
ついでに数年前に伴奏付きで作った音源の事も思い出し、恥を承知で公開してみようかなと。
8回連続の連載にしようと思っております「はなうたばんそうつき」。
8曲の歌で構成しようと思っています。
元にある曲は、自分が20代、30代に作ったもの。
とはいえ、形として残っていたのは、コードを付した簡単な歌詞ノートのみ。
それを形に変えるための道具、DTMとの出会いについては後日書こうと思っていますが、この邂逅によって、頭の中にしかなかった曲が形になった。
それが5年ほど前の話。
自分が小説を書くことに夢中になる前の一年間ほどは、こればかりやっていたのでした。
迎えた歌姫はボーカロイドのIA。
素直に丁寧に歌い、しっかり歌詞を伝えてくれる。
「風にゆられて」
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