36人が本棚に入れています
本棚に追加
─5─
お金は準備できた。
この三日間、慎太は週末ということもあり、忙しく過ごしていたようだった。連絡は一度も来ていない。
今日、何時に家に来るのか、そもそもどこで渡すかなどの連絡は昼を過ぎても来ず、やきもきしているとスマートフォンが鳴った。
「慎太?」
そう思い画面を確認すると、親友の優紀だった。
「もしもし、どうした?」
「恵!」
「どうしたの、そんなに大きな声で」
スマートフォンを耳から離したくなるほどの大きな声だった。
「落ち着いて聞いて……今、新聞見てたんだけど……」
ここまで話したところで優紀は「ふう」と、大きく息を吐いた。
「恵、落ち着いて聞いて。今、家で新聞を見てたんだけど、お悔み欄……お悔み欄で……慎太さんの名前を見つけたの……」
「え…………」
優紀が何を言っているのかわからなかった。
お悔み欄って……。
お悔み欄って……。
慎太が……そんな……。慎太が……。
「恵……」
お悔み欄という言葉が頭の中を埋め尽くす。
「お悔み欄って……」
「うん……」
優紀はそれ以上、何も言わなかった。
「どうして……慎太が……」
「理由は書いてなかったけど、今日の十八時からお通夜だって……」
お通夜……。
そうか……。
慎太は……死んだのか……。
「──わかった」
私はそう返事をし、知らない内に通話を切っていた。
部屋のソファに体がどんどん沈んでいくような、不思議な感覚に陥ってた。
まるで、底なし沼に沈んでいくような……。
死んだ……。
慎太が、死んだ……。
死んだ……。
──どうして、慎太が。
最初のコメントを投稿しよう!