ありがちな、ただの恋

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 我に返ったように、響花はメソメソと泣き出した。小さな声で、ごめんなさいと繰り返している。  そうこうしているうちに、やっと駅に着いた。エスカレーターを登ってホームに着いたとたん、僕と響花が乗るべき終電車が滑り込んできた。  響花の親友と別れ、ふたりで電車に乗る。電車は空いていた。響花をシートに座らせて僕も隣に座る。  彼女はすぐに寝てしまった。僕の肩に頭を乗せ、気持ち良さそうな寝息を立てている。  彼女の髪が僕の頬をくすぐり、僕は彼女の肩に腕を回して支える。と、彼女が小さな声で何か言った。 「なに?」  耳を寄せると響花は顔を上げ、 「好きよ」  たった一言だけ。また寝てしまった。  ただの寝言だ。寝言に決まってる。僕は眠りに落ちた響花へ優しく話しかける。 「おやすみ。かわいい人。僕がそばにいるからね」  𝑭𝒊𝒏
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