1時間目

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 お化け、お化けと一口に言うが、そういう人に聞きたい。お化けって何だ、と。幽霊なのか、妖怪なのか、ゾンビにキョンシー? あるいはそれを総じてなのか。  かの有名な、ゲゲゲの鬼太郎の主題歌に「お化けの学校」と出てくるが、鬼太郎は妖怪ではなく、お化けということなのか。ググることなく答えられる人は、おそらくいないのではあるまいか。したがって、安易に「お化け」という表現を使うのは、控えていただきたい。  現に私自身が、何なのか分からないのだから。  気が付くと、お化け屋敷の片隅にいた。  男のくせに情けないと言われそうだが、私はこの手のものが幼い頃から苦手だった。  夏になると、むやみやたらに流れる、恐怖番組や映画の告知。それだけで小学5年の時には、テレビの前でちびったくらいだ。あのようなものを、嬉々として見ようとする人たちは、どこかおかしいのではないかと疑っている。なぜ、わざわざキャーとか、ワーとか言うために、怖いものを見たがるのか。到底理解出来ない。  薄暗い景色の奥に川のようなものが見える。そこへ続々と人が渡っていく。川を渡った先がお化け屋敷の入口ということだろうか。だとすると、なかなか凝った演出だ。人の数からして、このアトラクションの人気のほどが分かる。平日の日中でこれだけの人出だ。休日ともなると、もっとすごいのだろう。  だが、私にはそんな暇はない。今日は大事なコンペがある。プレゼン資料の最終チェックもしたいし、一刻も早くこの場から退出して、会社に向かいたいのだが、どうしたわけか体がいうことをきかない。これが、俗に言う「金縛り」というものだろうか。
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