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庭に降り立ったスズメを見て、僕は思う。
このスズメになって、君のそばに飛んで行きたい。君がよく見ていたスズメになって。スズメになれば、君は僕を見てくれるだろうか。
何にでも化けることができるなら、君のそばに行けるものに。君の目に止まるものに。君が触れるものに。
空を見上げれば流れる雲に、君を思う。
ぼんやり眺めていた君の横顔に、愛しさも切なさも不安も感じた。触れている手の体温をもっとあげたいと強く思った。
君はこの世に本当に存在しているのかと、不安で何度も確かめた。それほど君の横顔は、近くて遠かった。
「ねぇ、あの雲恐竜に見える。ほら、あの空を飛ぶ鳥のような。なんだっけ?なんて名前だったかな」
そう笑う君は、確かに僕の隣にいたのに。
ある日雪景色のなかに見つけた狐、僕を見つめる瞳が、そして空を見上げる横顔に、僕は安堵した。悲しくなった。そして動揺した。
見つけた。
僕の真横を温かい風が通り過ぎた。
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