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なんだか、疲れたから
生き方を変えてみることにした
速く走って生きるのが、嫌になったんだ
速く走らずに、のんびりと、歩くことにする
よそ見しながら、焦らずに
まっすぐ速く走っている人たちには、見えない景色を、贅沢に味わうんだ
「おいおい、そんなこと言っていたら、人生を無駄に過ごすことになるぞ!」
「時間を台無しにするな!」
「もったいないじゃない! 時間は有限なんだから!」
僕を、焦らせようとする声がする
上下左右、右斜め上、左斜め上、右斜め下、左斜め下、その他いろいろな方向の景色を、ゆっくりと味わう、という選択肢もあるんじゃない?
僕は、その選択肢を選ぶよ
「そんな呑気なことを言って……君は、効率って言葉を知らないのかな? そんなに、ゆっくりと、あっちこっち見てたら、多くのものを得られないし、全然前に進めないじゃないか!」
僕を、不安にさせる声がする
急ぎながら、まっすぐだけを見ていた方が、多くのものを得られて、どんどん前に進めるのだろうか?
僕は、間違っているのだろうか?
得たものの数と、進んだ距離が、それほど大切なのだろうか?
久しぶりに、迷う
久しぶりに、自分を疑う
確かなのは、迷うのも、自分を疑うのも、久しぶりに行動を起こしたからだということ
久しぶりに変化したからこそ、迷えたし、自分を疑えるようになった
もしかしたら、彼らの言う通りなのかもしれない
でも、ごめんね……僕は、好きなように生きるんだ
彼らは、激怒したまま、大急ぎで、細い細い道を、ぎゅうぎゅう詰めになって、苦しそうに進んでいく
「おい! 押すな!」
「もうちょっと離れろよ!」
「急げ! 急げ!」
なんだか、とても大変そうだ
じゃあね、僕は、この道を進むから
他に誰もいない、貸し切り状態の、この道を
去っていく、大変そうな彼らを観察しながら、僕は、広々とした道を、上下左右、右斜め上、左斜め上、右斜め下、左斜め下、その他いろいろな方向の景色を、ゆっくり、ゆっくり、味わいながら、のんびり、のんびり、歩いていく
走っている彼らの声が、少しずつ小さくなって、聞こえなくなった
彼らと離れた寂しさを、ゆっくり、ゆっくり、味わいながら
僕は、のんびり、のんびり、歩いている
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