狐、化ける。

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『……稲穂(イナホ)貴方(あなた)、正気ですか? それとも、瘴気(しょうき)ですか? どこぞの妖魔の(けが)れにでもましたか』 ” あ? 『しょうき』って何だ? ” 『……貴方には、『変化(へんげ)』はどうしても必要な時以外使わない方が、と言いました。まあ出会ってから一年ほど経ち(たち)ますから……そのように自信があるのでしたら、さぞかし修練をされたのでしょうね』  久しぶりに会えて、これで助かると思うと嬉しくて、小さく振ろうとした手を止める。何か今日コイツ、変な感じだな。心なしか、怒っている気がする。  あれ?  あれれ?    いや、待てよ……?  わかった!   佑陽(ゆうひ)、まさかコイツ!  さては俺の完璧な変化に驚いちまってるな? ” へへ、すげえだろ? 俺の変化。お前に似せて化けてみたんだ。もしかして俺も先祖返りかもな。俺もお前と一緒に修行…… ”  ぞわり。  体中の毛が逆立つ。知らないうちに、佑陽と距離が離れていた。  いや、違う。  俺が後ろに飛んだんだ。  薄開(うすびら)きの目の冷たさに、血が引いていく。こんな面をした佑陽なんて初めてだ。  くそっ!  嫌な汗が流れてきやがる!  佑陽!  佑陽よお!  俺らはダチじゃなかったのかよ!
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