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「謝るのは僕の方だよ」
ぽんぽんと、オイラの頭に優しい手が乗る。
「ずっと騙されたフリしててごめん。君にこんな辛い思いをさせちゃうなんて」
「え、……え?」
騙されたフリ?
オイラは思考がついていけず、完全にリントらしくないマヌケな顔を晒している。
「えっ、というかバレてた? なんで?」
ポカンとしていると、スズが可笑しそうに微笑んでオイラの頬をむにっとつまむ。
「そりゃそうだよ。だってリントは、架空のキャラクターなんだから」
「えええ!?」
「大好きな小説のキャラクターなんだ」
そう言われても、オイラはまだついてこれない。
それでもお構いなしにスズは語る。
「リントはサブキャラなんだけど、主人公にも負けないくらいかっこいいんだよ。あ、この小説は学園ミステリーでね、校内の悪事を暴いていくストーリーなんだけどさ、リントは理事長の陰謀に気付いてしまって大きな事件に巻き込まれて――」
オイラは今までの自分を思い返してちょっと恥ずかしくなる。
でもスズが笑っているから、もうなんだっていいや。
「きみ、狐さんなんでしょ?」
「えっ」
ドキッとした。
スズの目は鋭くて、リントじゃなくてオイラを見つめているみたいで。
オイラは、化けの皮をはいだ。
「わぁ! すごい、本当に狐さんだ!」
嬉しそうにスズがオイラの頭を撫でる。
うん、これも悪くないな。
気持ちよさに浸っていると、スズがぼそっとつぶやいた。
「おばあちゃんが言っていた通りだ」
……ん?
なんて?
スズのばあちゃん?
……ばあちゃんにもバレていたというのか!?
狐の姿じゃ言葉が発せないので、再びリントの姿に化けた。
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