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狐狸案
昔々、世界のどこかに、仲の国という名の国がありました。そこはとても大きくて広く、たくさんの部族が暮らす国でした。
その東の果てに、パクと呼ばれる部族が住んでいました。彼らの容姿は他部族よりも劣る上、文明的にも遅れていたことから、仲の国の国王はパクの人々を奴隷のように扱っていました。
一方、仲の国から海を隔てたところには日の国という名の小さな島国がありました。そこに住む人々がとても勤勉だったおかげでとても栄えていたのですが、国土が狭いということが悩みの種でした。
そこで日の国の国王が目をつけたのは仲の国でした。あの大きな国ならば、少しくらい領土をもらったってかまわないだろうと考えたのです。
仲の国と日の国の間で戦争が始まりました。
その結果、日の国は仲の国の東の端っこの土地を奪い取ることに成功したのです。
その土地にはパク族が住んでいました。
日の国の国王は、パクの人々を日の国の国民として迎え入れました。教育を受けさせ、町を整備し、もともとの日の国の人々と同じような暮らしを与えたのです。
それにはパクの人々も大喜びでした。そもそも仲の国では奴隷のように扱われていたのですから。
ですが、パクの人々はそれだけでは満足できなくなりました。ただ単に日の国の住人になっただけではなく、その容姿からすべて日の国の人々のようになりたいと願ったのです。
そこでパクの人々が手を出したのは怪しげな秘術でした。その術を用いることで、自分たちの顔を日の国の人々のように変えていったのです。
日の国の人々はパク族の行動を、まるで人を化かす狐や狸のようだと警戒しました。
しかしパクの人々の行動はどんどんエスカレートしていきます。
日の国の人々のような容姿を手に入れたことで、今度はその文化をも自分たちのものにしようとしたのです。
道具類、工芸品、芸術品や武術、お菓子や料理にいたるまで、パクの人々は日の国のあらゆるものを模倣し、それらをあたかも自分たちが生み出したもののように主張しだしたのです。
やがて世界中に、日の国の人間になりすましたパク族が広がることになりました。見た目は同じでも、中身はパク族のままの人々が。
その結果、それまで世界の国々で高く評価されていた日の国は、没落する運命となったのです。
この故事から、人のものを盗用することを〈パクる〉、狐や狸のように人を化かすような考え方を〈狐狸案〉、と呼ぶようになった、とか。
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