背乗り

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中はそこそこ混んでいたが、一課の二人は直ぐに分かった。 李は、彼らのすぐ後ろに陣取った。 一課の人間は我々の顔を知らないし、山口は一課の人間を知らない。 ここで、彼らの話を聞いて何らかの足掛かりをつかむしかないと思った。 さりげなく盗聴器を彼らの席の下に付け、小さなイヤホンで彼らの話を盗聴した。 目の前では山口が赤い顔で、野球がどうのこうの何やらしゃべっているが、適当に相槌を打っていればいい。 へたに仕事の話にならない限り問題はない。 山口に会ったのは、むしろついていたかも知れないと、李は思った。 暫く山口の話に相槌を打ちながら笑顔で酒を飲んでいた李の体が急にピタリと止まった。 李の顔がみるみる変わっていく。 時計を見た。 そして何かを決心したような顔をした。 「山口さん、申し訳ない。今日はそろそろお開きにしませんか」 「えっ? もうですか? あ、そうですか。誰か待ってる人でもいるのかな? 分かりました。私はもう少し飲んでいきますので、どうぞ。あ、今日はいいですから、そのぐらい私がおごりますんで。どうせまたすぐお会いできますからね」 「そうですか、すみません。ではお言葉に甘えてご馳走になります。また来週。お先に失礼します」 李は席を立った。 李は、その盗聴で本丸に迫るとんでもない情報を得たのだった。
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