煩悩は事件

1/2
前へ
/10ページ
次へ

煩悩は事件

「ただいま、ミケ。直ぐに御飯の用意するからね」  今日も勤め先から帰宅したこの家のご主人様は(IT企業で働く27歳独身)、さっそく飼い猫ミケ(メス3歳)の晩御飯を作り始める。 「ごめんね~遅くなって。仕事が終わんなくてさ」  彼は言い訳をしていまうくらい、飼い猫のミケへの愛情は持っている。  そう、それは間違いない事実なのだが、最近の彼はミケに御飯を与えると直ぐにビールを左手にグラビアアイドルのイメージビデオを見始めてしまうのである。  帰りをずっと待ち続けていた飼い猫のミケが近寄っても、軽く頭をなでるだけ。遊ぶどころか抱いてもくれない。それどころか、最近ではご主人様の寝室からすら追い出されてしまい、孤独にリビングで過ごす毎日。  猫とは言え、それでは不満が募ってしまう。しかし、今の彼にはそのミケの状況が見えなくなってしまっているのだ。  では、彼が何故愛猫であったミケに寄り添わなくなったのか?  それは、飼い猫への愛情以上の抑えきれない”若き血潮のざわめき”、それが今の彼の欲求を征服してしまっているからなのである。  それを抑え込む為には、残念ながら最低限、椅子に座った時の膝の上と右手は、開けておかなければならないのである。  しかしそれも、彼にとってこれは定期的に訪れる一過性のもの。恐らくはその内一段落はするのであろう。だが、これに猫のミケが理解を示すことは非常に困難を極めてしまう。  なので、今日もミケはその対抗策を猫なりに考えてしまうのである。 「ニャニャニャンニャン・・・ニャニャ」 (訳:ご主人様は、きっとアタイより若い人間の女性の方が好きになったんだ。だからイメージビデオとか言う半裸の女ばかり見てるんだ。きっとご主人様は”盛り”が付いたんだ)
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加