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プロローグ
昨夜は部長がロマネ・コンティーを注文してくれた。しかし、葉山紅は何度飲んでもワインの味がさっぱり分からなかった。それとなく相手に話を合わせ、愛想を振りまいてた。
一方、部長もワインの味は全く感じていなかった。それどころではなかったからだ。自分だけのために傾けられた顔、吸い込まれそうな蠱惑的な瞳、そして微笑みを形作る赤い唇の彼女に魅入られていたのだ。
楽しい時間が終わると少しばかり虚しさも湧いてきた。今日は久しぶりの休み。紅は気分転換にプラプラと街に出かけた。いつも通っている本屋にふらりと立ち寄り、本の香りに誘われて、たくさん衝動買いしてしまった。家に帰ったら、部屋の本棚を整理しなければならないと紅は少し後悔した。
散歩を続けていると、前方にこの頃よく出会う女性を見かけた。紅はゆっくりと彼女に近づいていく。
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