Make Believe

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「数あるスーパーから御社を志望したのは、不況下でもお客様ファーストを貫く運営方針に惹かれたためです。例えば、価格設定です。パンデミック収束直後、流通難で競合他社が値上げに踏み切る中、御社は価格を1円も上げなかった。私も1人の顧客として大いに助かったのを覚えています。また、これまで培った経験を活かせると思ってもいます」  宣誓するように言うと、2人の目つきが鋭く光った。ここでは興味を持って貰えたようだ。 「入社後のビジョンはありますか」 「まずは勤務を通して、元感染者の雇用にリスクがないことをこの身を持って証明します。その後は店長を目指して、将来的には、元感染者を積極的に受け入れる店舗を作り上げたいです」  勝負所と踏んで、唾を飛ばしてまくしたてた。 「ほぅ。控えめな印象だったが、内にハングリー精神も秘めていたか」  恰幅のいい方が顎先をなでる。 「さながら、獲物を岸壁に追い詰めたオオカミのような目をしていた。意欲があるのは間違いなさそうです」  華奢な方の声色が半音上がった。  これまでで最も2人のリアクションが大きい。
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