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どうにか、腹の底からこみ上げるドス黒い衝動を堪えることができた。
2人を見据えて毅然と返した。
「ゾンビと化していたときの記憶はありません」
「生肉で気持ちが揺らぐこともありません」
「分かりました。そろそろかな」
恰幅の良い方が華奢な方に目配せする。
「そうですね」
華奢な方がうなずいて応じる。
この感じ、もう終わりか?
こめかみのあたりに冷や汗が滲み出る。
まだ、妻と考案した工夫にも気づいて貰えていない。
これ以上、自分を売り込めずに落ちるわけにはいかない。
「本日の面接は以上となり――」
恰幅の良い方がそう言い出したところで、僕は弾むように立ち上がった。勢いのあまり、パイプ椅子が後ろに倒れて派手な音を立てた。
2人の面接官は唖然として口を開いている。
僕の荒々しい鼻息だけが室内で音を放っている。
このまま引き下がったら、妻に合わせる顔がない。
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