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セールストークが不発なら、直に魅力を味わってもらうほかない。スーパーの食品で言えば試食だ。
「あぁ……えぇと……」
言葉に詰まり、呻くような声になる。
「気を悪くしたのであればすまない!」
恰幅の良い方の謝罪が轟いた。デスクに両手をつき、惜しげもなく禿頭を晒している。
華奢な方も倣って同じ姿勢を取った。
「いや……いや……」
パニック状態で頭が満足に働かず、別に怒っていないと否定しようにもたどたどしい言葉しか出ない。
1メートルほど距離を詰めた時点で、2人が頭をがばっと上げた。
2人とも顔色が蒼白そのものだ。
「やっぱりゾンビ化してますよ!」
華奢な方の金切り声で恰幅の良い方が立ち上がった。黒い箱を雑に開け、中から拳銃を取り出した。安全装置の解除に苦戦している。
「違う……違う……」
近くで見てもらわないと。
その一心でデスクにふらふら歩み寄っていく。
言動がゾンビっぽさを助長していると気づいていても止まれない。
アピールへの執着が恐怖を上回っている。
「これ以上近づけば撃つぞ!」
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