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安全装置の解除に成功したらしく、恰幅の良い方が僕に銃口を向けた。
凄んだ声から脅しではないと伝わってくる。引き金を握る手はぶるぶる震えているが、もう2メートルもない至近距離だ。撃てば銃弾が僕に当たる可能性は極めて高い。
それでも、歩を進める。
「3秒待つ。止まれ」
「見て……見て……」
「3、2、1……」
恰幅の良い方が最後の1秒を数えてから5秒が経った。僕とデスクの距離はもう1メートルを切っていたけど、恰幅の良い方は引き金を引かない。
「なんで、撃たないんですか」
壁に背中を貼りつけた華奢な方が声を絞り出すと、恰幅の良い方が銃を下ろす。
「とても、とても撃てん。見た目が完全に人間だ」
見た目が、完全に、人間。
その言葉で僕はその場で足を止めた。
2人が床にへなへなと座り込んで、荒い息を口から吐きながら不思議そうに僕を見上げる。
「驚かせてすみません。どうしても、僕を近くで見て欲しかったんです」
2人が床に尻を着けたまま顔を見合わせる。
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