分かっているだけで、五人

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うちの高校は屋上を開放している。 転落の危険があるから屋上を閉鎖している高校もあるけど、うちの高校は高いフェンスがあるから問題ないということらしい。 屋上への扉を開けてすぐ目に飛び込んできたのは、フェンスの向こう側に立つ人影だった。 制服を見て女生徒だと分かったが向こうを向いているので誰かは分からない。 すぐには状況を理解できなかったけど、徐々にその異常さに気持ちが焦ってきた。 居ても立っても居られなくなり、夢中でフェンスに駆け寄った。 「ちょっと待って、危ないからこっちに戻って!」 ゆっくりと振り向いた女生徒は私の知らない人だったけど、そんなの関係ない。 「いいから、一回こっちに戻って話そう。ねっ」 するとその女生徒は一筋の涙を流し薄く微笑むと、か細い声で、 「……ありがとう」 言うとスッと目の前から落ちて、……消えた。 息をするのも忘れるくらい、呆然としてしばらく動けなかった。 さっきの衝撃的な光景を思い出したら、ふっと意識が飛んだ。
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