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やがて嵐が去った部屋の中で、サヨのすすり泣く声だけが聞こえる。
「オト姉様、ご、ごめんなさいっ……! 楽器、壊されちゃった……うぅぅっ……!」
「サヨ……」
酷く重く感じる身体に鞭を打ち、這うようにしてサヨに近づく。
短く切り揃えた鳶色の髪を胸に抱き、ひりひりと痛む頬を頭に添えた。
「怪我はない? 怖かったよね、ごめんね……」
「ふっ、うぅっ……うわぁぁあああん!」
緊張の糸が切れて泣きじゃくる少女の背中を何度も撫でた。濁った金の瞳から涙がしとしとと零れ落ちる。曇った脳裏に過るのは、ツツジ並木の出逢い。
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