灯台が照らす先

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灯台が照らす先

 クレセンティアに置かれたリュクスの東部防衛本部は、高台の岬に灯台を兼ね備えた基地だ。  厳重な警備が敷かれた門の前で、ノアと屈強な軍人が相対してた。 『わざわざ献上を連れ歩いて散歩ですか? 良いご身分ですね』 『男と無駄なおしゃべりをする趣味はない。アルベルトと約束がある。通してもらおうか』  大陸語での応酬が続く。オトには聞き取れなくても、敵意に似た感情を向けられていることはわかった。  ベレー帽を被って日焼けした門番は、怯える雛鳥を見て鼻で笑う。 『今度は使える献上だといいですが』 『彼女は道具ではない。羽耳を持つだけの、俺たちと同じ只人(ただびと)だ』 『さすが、殿は心がお広い』  男はどこか侮辱するように笑い、門を開けた。  アスファルトで舗装された坂道へ踏み出す。自分たちへ向けられるチクチクとした視線を敏感に感じ取った。
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