48人が本棚に入れています
本棚に追加
灯台が照らす先
クレセンティアに置かれたリュクスの東部防衛本部は、高台の岬に灯台を兼ね備えた基地だ。
厳重な警備が敷かれた門の前で、ノアと屈強な軍人が相対してた。
『わざわざ献上を連れ歩いて散歩ですか? 良いご身分ですね』
『男と無駄なおしゃべりをする趣味はない。アルベルトと約束がある。通してもらおうか』
大陸語での応酬が続く。オトには聞き取れなくても、敵意に似た感情を向けられていることはわかった。
ベレー帽を被って日焼けした門番は、怯える雛鳥を見て鼻で笑う。
『今度は使える献上だといいですが』
『彼女は道具ではない。羽耳を持つだけの、俺たちと同じ只人だ』
『さすが、魔獣に呪われた領事殿は心がお広い』
男はどこか侮辱するように笑い、門を開けた。
アスファルトで舗装された坂道へ踏み出す。自分たちへ向けられるチクチクとした視線を敏感に感じ取った。
最初のコメントを投稿しよう!