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東の果ての、その向こう
「オト、こちらへ」
ノアに呼ばれ、手すり伝いに近寄る。
彼が見せたかったのは、東の海だった。オトが囚われていたカージュの小島も見下ろせる。
「大陸ではクレセンティアを東の果てと呼んでいる。ならカージュの奥に続く海はどこへ繋がっていると思う?」
「果てということは、行き止まりではないのですか?」
「海に行き止まりはない。あの奥にはリュクスのさらに西側――連邦大陸と繋がっている。実力主義の小国が徒党を組む血生臭い土地だ」
東の先が、西に。困惑するオトの手に、島の名産品でもある硝子玉が渡された。
「この世界は硝子玉と一緒だ。球体はどこまで進もうと行き止まりがない。一周回って、また同じ場所に戻る」
「ほんとだ……」
「連邦大陸は長らくリュクスと睨み合いを続けている。さっき蒸気船を見ただろう? 世界的にも造船技術は発達していて、海の果てはもう果てではなくなってしまった。ほら、あそこを見てみろ」
備え付けの望遠鏡に案内され、中を覗いてみる。拡大された筒の中をウミネコの群れが横切った。ノアが指差した方へ向けると、レンズいっぱいに白波の爆発が起こる。
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