東の果ての、その向こう

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「ッ……!?」 「我が軍の巡視艇が所属不明船を撃沈させた。無法者を装っているが、連邦大陸の斥候であることは間違いない」  手持ちの双眼鏡で同じ方向を見ていたアルベルトは淡々と語るが、オトは大きな衝撃を受けた。憧れしかなかった綺麗な海の上で、こんなことが起きていたなんて。 「神獣信仰の根強いクレセンティアは自衛力が乏しい。それは連邦大陸も十分にわかってる。つまりここさえ占領してしまえば、リュクスに東側から攻め入れる」 「そんなっ……!」  望遠鏡から目を離し、非情な現実を突きつけるノアを振り返る。  クレセンティアが国盗り合戦の最中にいることすら、カージュにいた頃は知らなかった。自分が生きている世界のことなのに、何も。 「連邦大陸は武力で成り上がってきた国だ。信じる神を持たず、神殺しも恐れない」 「じゃあリュクスの皆さんがいなかったら、今ごろ……」 「連邦大陸に占領され、島民は捕虜と言う名の奴隷にされていただろう。雛鳥も同様にな」  おぞましい想像に、オトは自分の両腕を抱いて震え上がった。 「私、本当に何も知らなくて……」 「だがもう、自分の目で見て知ったろう?」 「……はい」  いかに狭い世界で生きていたのか、まざまざと思い知った。  強張り震えるオトの両肩に手を置き、ノアは安心させるように語りかける。
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