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悪夢の襲来
個室で無事元の姿へ戻ったアルベルトが、怒気を隠しもせず出てくる。
「一発ぶち込んでもいいか?」
「いいぞ、軍法会議の真っただ中へ連れてってやる」
腰の拳銃へ手を伸ばす幼馴染を鼻で笑うノア。私情の発砲は一発だろうと重罪だ。どうせできないと高を括った鳩尾に、拳銃ではなく弾丸を並べて加工したメリケンサックがめり込む。
「ブフッッッ!!」
「アルベルト様! それはもしや、わたくしが現役時代に女だからとナメられた時に使っていたバレットナックル……!?」
「勇退した英傑の置き土産だ。大事に使わせてもらっている」
「はうぅっ……う、嬉しいですぅ……!」
歴代の返り血が染みついたアルベルトの拳鍔を見て頬を染めるハンナ。二人はかつて同じ部隊にいた元同僚である。
うっとりと瞳を蕩けさせた秘書官の足元で、ノアが腹を抱えてうずくまった。
「クソッ、ゴリラが二体に……!」
「ノア様! 大丈夫ですか?」
膝をついたオトが心配そうにのぞき込む。純粋に身を案ずる姿はまるで礼拝室に飾られた乙女像のよう。感極まって淑やかな胸へひしと抱きついたノアを、軍靴とハイヒールが容赦なく叩きのめした。
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