悪夢の襲来

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 ∞  用事が済み、一人だけボロボロになった領事を連れて門へ向かう最中。  坂の脇道にある船着場が騒がしいことに気づき、四人は足を向けた。 『キース! しっかりしろ!!』  人だかりの中心にいたのは、ノアとオトに険悪な態度を見せていた門番だった。余裕のない大陸語で声で呼びかける人影には、隙間なく黒い(はね)(たか)っている。 『――ッ、全員退避! 警報発令、急げ!』  夢喰(むし)を視認し、アルベルトが声を張る。はっとした軍人たちがそれぞれの持ち場へ急いだ。残されたのは隊を預かる艦長と、横たわる男を涙ながらに抱きしめる門番だけ。 『いつ(たか)られた』 『海洋巡視中の仮眠時かと……』 『所属不明船に気を取られて見張りを怠ったな? 始末書は後で貰おう』  アルベルトよりも年高な艦長は、青い顔を苦々しく歪めた。  クレセンティアの海域を数日間に渡り巡視する隊員たちは、浅い眠りの中で厳しい船上生活を送っている。少しでも気を抜いて欠伸でもしようものなら、どこからともなく現れた黒い蝶に覆われてしまうから。先日命を落とした隊員もそうだった。
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