片羽のオト

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「右の羽耳もお揃いになるように切り落としてあげましょうか」 「本島の花街にでも置き去りにしたら、こんなのでも雄が引っかかるんじゃない?」 「歌えないなら要らないわよね、こんな醜い片羽」 「それ、は……」  いやです、その一言がか細い喉から出てこない。  セレニティは純潔と癒しを司る神獣。雛鳥は純潔を失うと、夢喰採(むしと)りに必要な神通力を喪失してしまう。穢れてセレニティの子でなくなった者たちは、両の羽耳を切り落とされて鳥籠の外へ放たれる。  オトは誓って清い身体だったが、訳あって左の羽耳を失っていた。  過去のトラウマで歌うことができず、不揃いな片羽であるオトを、周囲は簡単に軽んじた。男に純潔を奪わせて残された羽耳を切ってしまおうと、そんな恐ろしい提案を平気でするくらい。  するとそこへ、小柄な影が俊敏に舞い込んだ。
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