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独唱/洋琴伴奏
東部防衛本部から総領事館へ場所を移し、夢喰に覆われた瀕死のキースを運び込んだのは、こじんまりとした礼拝室。建国に携わった双頭の竜へ祈りを捧げる乙女像が中央に置かれ、天窓から午後の光が降り注ぐ。
アルベルトを筆頭に国防省の連中をぞろぞろと引き連れて戻ったことで、領事館職員たちも何事かと顔を覗かせた。椅子も置かれていない狭い礼拝室に集まった観衆は、ざっと五十人ほど。
人の間を縫って走って来たサヨが、中心にいたオトへ駆け寄る。
「オト姉様、夢喰採りをするって本当ですか!?」
「……ええ」
「あんなにたくさんの夢喰を……? 無理です、できっこないです! オト姉様まで死んじゃう!」
幼鳥の叫びは、その場にいた大人たちの頬を打つようだった。不可能なことを強いて、また雛鳥の命を摘んでしまったら……。
だがオトは、腰へ抱きついて震える小さな背中をさすって柔らかく微笑んだ。
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