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「やったのか!?」
アルベルトが食い入るように見つめ、グレイも前のめりになる。
他の夢喰も追随してくれとオトは祈り続けたが、反応はない。
キースの頭上を周回していた一頭がサヨの両手の平に留まる。これが現実だ。だからこそ楽徒を持つカージュは絶対的な力を持つのだから。
だが、黒蝶へ落胆の視線を向けたサヨがあることに気がついた。
「オト姉様、これ……!」
差し出された夢喰を見ると、小さな手に収まりきらない大きな翅に細かい亀裂が走っていた。こんな症状は見たことがない。
そして伸ばした指先が触れた瞬間、硝子が割れるように粉々に砕け散った。
「――ッ!?」
「夢喰が、割れちゃった……!」
驚く雛鳥たちの背後で、キースに群がっていた蝶にも同じように異変が起きた。砕かれた欠片は粒子となり、跡形もなく消えて行く。やがて全ての夢喰が塵と化した。
「何が、起きたんだ……?」
立ち上がったノアが呆然と呟く。本来の夢喰採りでは、黒蝶が舞い上がり籠へ吸い込まれていくはず。初めて観測する事象に思考が追い付かない。ただ、一つだけ確かなことがある。
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