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鳥籠
「メルヴィ、もうよせ」
夜の澄んだ空気をぴんと張ったような、清廉とした声が響く。
御簾を上げて現れたのは、癖のない月白の髪が特徴的な青年だった。髪色と同じ羽耳は先にかけて淡い朱鷺色に染まり、性別を超えた美しさを惜しみなく振りまく。
純白の着物に濃藍色の肩衣を合わせた彼の名はアタラと言う。メルヴィと同じく楽徒を束ねる一人だ。
「連絡船が帰って来たのに姿が見えないと思ったら、またこんなことを……」
「よその楽徒が、あたくしの教育に口を出さないでちょうだい」
「雲雀様が君を探していた。夢喰採りの成果報告も僕らの大切な役目だろう?」
告鳥の一羽であるその名に、メルヴィの眉根がぴくりと動く。
力なく平伏すオトを忌々し気に見下ろし、チッと舌を鳴らした。
「せいぜい雄に媚びて優しくしてもらいなさいな、この醜雌鳥」
「メルヴィ」
「フンッ」
過言をたしなめるアタラにそっぽを向く。苛烈な嘴をようやく閉ざしたメルヴィたちは、嵐のように去って行った。
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