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はわわ、と唇を押さえて動けなくなったオトの背後から、また別の足音が近づいた。
「オト姉様?」
「ふぁっ!?」
――ドンガラガッシャン! ドカッッッ!!
突然声をかけられて悲鳴を上げた瞬間、扉の奥で派手な物音が木霊する。何事かと驚いて中へ入ろうとするサヨをどうにか引き止め、そそくさとその場を離れようとしたのだが――……ギィ、と開いた扉から顔を覗かせた般若……じゃなくてハンナに微笑まれ、竦んだ足が床に貼りついた。彼女の後ろにはアルベルトの屍も見える。
「オト様、少しお話しましょうか?」
情事の痕跡なんて全く感じさせないほど整えられた衣服でにっこりと告げられ、思わず首を横へ振る。
「うふふ、なら卒倒させて記憶を混濁させないと……大丈夫、痛いのは一瞬です」
何も大丈夫じゃない。「しましょう、お話!」と冷や汗まみれの青い顔で切り返すオトを、事情がわからないサヨが訝し気に見上げた。
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