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「じゃあ、お二人は恋人同士なんですか!?」
まん丸な目を輝かせたサヨが興奮した様子で切り込む。怖いもの知らずで頼もしい限りだ。
オトに与えられた部屋へ移動した四人が座卓を囲む。女性ばかりで居心地が悪そうなアルベルトは、長椅子のすみで珈琲にちびちび口をつけた。
「出世株だったアルベルト様に嫉妬した上長が、クレセンティアへ左遷させてしまったのです。もう三年になります」
「それでハンナさんは領事様と一緒にここへ来たんですね! 好きな人のそばにいたいだなんて……ろまんちっくー!」
最近のサヨの趣味は、クレセンティア語に訳された大陸の恋愛小説を読み漁ることだ。気づけばオトよりもだいぶおませな女の子になってしまった。
「東部防衛本部は東を守護する最前線。こうでもしないと二度とお会いできないかもしれませんし」
「ハンナ、滅多なことを言うんじゃない」
「……申し訳ありません」
アルベルトにたしなめられ、ハンナは口を噤む。たしかに、連邦大陸の動きによってはここが戦場になる可能性もゼロではない。
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