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「ですが、さすがに時と場所を弁えていただかないと」
恥ずかしそうにじとりと隣を見るハンナに、当人は紺色の髪を掻いてバツが悪そうにそっぽを向く。刺激が強い光景を思い出して、オトも羽耳の根元を赤く染めた。
「オト様も、他人の逢瀬を覗き見してる場合ではありませんわ」
「へ?」
「献上の夜の習わし、ご存知ですか?」
「よ、夜の習わし!?」
食いついたのはサヨだ。大陸の小説には「ヒャー!」な場面が毎回お約束である。オトに見つかったら没収されるから、絶対に秘密だが。
案の定、穢れ知らずな純潔そのもののオトは首を傾げていた。
「夢喰は人々が寝静まる夜、特に活動が活発になります。そのため大陸人を先導する領事が集られないよう、歴代の献上は寝室を共にしていたとか」
「し、寝室を、一緒に!?」
「共に寝るということですか?」
「共寝っ!?」
ハンナとオトの会話にいちいちビクンビクンと反応する幼鳥に、アルベルトが口元を隠して笑いを堪える。おませもここまで顕著だと、愛らしいを越えて面白い。
「でも、それが献上のお役目なら……!」
そしてなぜかやる気を見せるオト。夜を共にするという意味がわかっているのかいないのか、おそらく後者だ。
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