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這いつくばるオトの下からサヨが抜け出し、彼女の肩を揺さぶる。
「オト姉様、大丈夫……?」
叩かれた頬はみみず腫れが走り、唇を血が伝った。きっといつも以上に醜い顔だろう。
「大丈夫」と袖で顔を隠したオトの細腕を、アタラが引き寄せた。はっと顔を上げたが、すぐうつむいてしまう。赤い水引の髪飾りが彩る美しい顔に見惚れたのもあるが、それ以上に恥ずかしかった。彼とは正反対の惨めで醜い姿を晒していることが。
「こうなる前に呼んでって、いつも言ってるのに」
「だって、迷惑かけちゃうから……」
「僕がオトに一度でも迷惑だって言った?」
優しい声色に問われ、弱々しく首を振る。
アタラはオトと同い年の十九歳。片羽のせいで虐げられるオトを気にかけ、こうしてよく手を差し伸べてくれる。
彼やサヨの心配りがあるから、オトはこの華やかで排他的な籠の中でも生きてこられた。
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