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――私たちのために、死ぬまで歌っておくれ。
「それからしばらくして、村の異変に気づいたカージュから告鳥様たちがやって来ました。セレニティ様の雛鳥を私物化した罪で村は焼かれ……生き残ったのは、私だけです」
今あるリラだけを抱えて、オトは告鳥たちと海の鳥居をくぐった。だが無理に歌い続けた後遺症で鳴官は傷つき、トラウマに囚われたままの歌えない片羽として虐げられ続ける日々。そんな痛みが、ようやく終わったのだ。
「……羽耳の痕に触れてもいいか?」
ただ、慈しみたいと思った。本当にそれだけ。だがオトは涙を浮かべて首を振る。
「手当が疎かになってしまったので、皮膚が引き攣ってしまってとても醜いんです。きっと気分を悪くされてしまいます」
誰にも見られたくなくて、いつも髪を下ろして隠していた。サヨにだって触らせたことはない。ノアに見せて、もし少しでも嫌悪の表情を浮かべられたら――……そんなの、堪えられない。
「なら、俺も秘密も教えてやる」
「ノア様の、秘密……?」
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