純潔の誓い

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「あらゆる者に汚らわしいと言われた俺の黒髪を君が綺麗だと言ってくれたように、君の片羽や羽耳の痕を醜いとは思わない。だから……触れても、いいか?」  頬を撫でる指が向かう先を、オトは拒まなかった。焦げ茶色の髪を優しく払い、窓際から差し込む月光と間接照明の明かりの下に晒す。  露わになった耳の穴を囲う変色した皮膚。引き攣りガタついたそこに耳朶はない。人の耳とも雛鳥の羽耳とも違うそれを、オト自身でさえ疎んでいたのに。 「オトが愛されようと一生懸命もがいた証だ。すごく美しくて、愛おしいよ」  温かい指先が何度も傷痕を撫でる。「綺麗だ」「愛らしい」と、甘く囁きながら。それだけでとろとろに溶けてしまいそうになる。終ぞ与えられなかった母の温もりに似た感情を注がれて、開きっぱなしだった傷口が縫われていくようだった。 「なぁ、純潔を失うと神通力がなくなると聞いたが、どこまでが純潔なんだ?」 「どこまで……?」 「こうして触れ合うのは問題ないようだが、さすがに唇はだめだろうか?」  猛烈に口付け(キス)がしたい。そんな衝動に襲われた。
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