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(こ、れ……)
昼間にハンナとアルベルトがしていた口吸いを思い出した。凛々しい彼女が見せた、幸せそうに蕩けた表情。愛されている者の幸福を物語る姿に胸が疼いたのは確かだ。でもまさか、それと同じことが自分の身に起きるなんて。
角度を変えて何度も触れ合うたびに、羽耳がぴくぴくと反応する。噛み癖の痕が少し薄くなった下唇も丹念に啄まれた。レースの裾からするりと入り込んだ手に右の片羽と左の羽耳の痕を優しく撫でられ、まぶたの裏に星が散る。
「ん、んぅっ……!」
羽耳を覗かれた時と似たような熱が脳髄でぐるぐると渦巻く。溺れてしまう。これでもかと注がれる愛情に。
(でも、なんだか……)
――もどかしい。何にも隔てられることなく、唇に触れてみたい。
こんなことを口にしたら、はしたないと思われてしまうかも。
熱を透き通す薄いレースに、胸の奥がきゅーっと締めつけられる。オトの欲望の皿は空っぽな上に底が浅かったはずなのに、幸せを知ってどんどん欲深くなってしまった気がした。
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