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どれだけの時間そうしていたのだろう。重ねるだけだった唇がすっと離れていく。心地良い温もりが恋しくてうっすら目を開けると、とても真剣な表情を浮かべたノアがふいっと目を逸らした。
「やっぱりよそう」
「え……」
浮かれるような熱に満たされたのは自分だけだったのだろうか。そんな考えが頭を過る。だが……。
「これ以上したら、朝までもたない」
「……!」
黒髪がさらりと揺れる頬から耳までぶわりと赤く染まった様子に、オトも負けじと茹で上がった。レースカーテンが取り払われ、そのまま胸の中へ引き寄せられる。
「オトは俺の小鳥だが、大陸人の歌姫でもある。でもいつか許される時が来たら、その時は……何にも阻まれずに、君と愛し合いたい」
「愛し合う……?」
「成せばわかるさ。あ、サヨには聞くなよ。教育上よろしくないからな」
それではどちらが姉鳥なのかわからないじゃないか。「子どもじゃありません」とむくれる羽耳にふっと息を吹きかける。「ひゃあああっ!?」と飛び上がった愛らしい小鳥の跳躍に、ノアが大きく吹き出して笑った。
【片羽のオトは愛を歌う<完>】
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