空と海の向こう

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「わぁ……!」  目下に広がる光景を前に、オトが感嘆の声を上げる。  扇状に末広がる港を見下ろした先には、立派な蒸気船が海に浮かんでいた。煙突から煙を上げ、船首に掲げられた双頭の竜の紋章旗が風に(ひるがえ)る。 「リュクスの蒸気船だ。出航するところかな?」 「ねぇアタラ、あそこ……」  船着場で出航を見送っていた一団を指さす。そこにいたのは紋付の羽織を着たクレセンティアの島主(とうしゅ)だった。つまり、地位のある大陸人のお見送りに違いない。 「そう言えば近々リュクスから新しい領事が来るって、告鳥(つげどり)様が言ってたな」 「じゃあ、前の領事様があの船に乗って大陸へ帰るところ?」 「たぶん。新任もあれに乗って来たんじゃない?」  島にいる大陸人の安全を守るのが総領事館の仕事で、その責任者が領事。クレセンティアには大使館がないため、外交の補助もしているとか。つまり領事はリュクスの代表。島主が見送るのも納得できる。 「すごいね……」 「仰々(ぎょうぎょう)しいよ。島民も大陸人も同じ人間だろうに、こんな見送り……」 「ううん、そうじゃなくて……海は世界中に繋がってるって本に書いてあったの。羽がなくたって船さえあればどこにでも行けるんだって。すごいよね」
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