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「……オトも、行きたい?」
「え……?」
水平線と異国の船を見て輝度が増した金色の瞳が見開かれる。
淀みのない真白の羽耳を持つ美しい青年の背後には、憎らしいほど澄んだ青空が広がっていた。
「私たちは、行けないもの……」
「……そうだね」
行かないのではなく、行けない。その言い回しの裏側を察するには十分なほどの羨望を感じた。
彼女の手を取って、あの船に飛び乗るような気概が自分にあれば――アタラはそんなもどかしい感傷を覚える。だが彼もまた神鳥の雛だ。羽耳を授かった者の責務を全うする義務がある。幼い頃からカージュでそう教え込まれてきた。
雛鳥たちは、どこにも行けない。
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