空と海の向こう

4/4

48人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
「……オトも、行きたい?」 「え……?」  水平線と異国の船を見て輝度が増した金色の瞳が見開かれる。  淀みのない真白の羽耳を持つ美しい青年の背後には、憎らしいほど澄んだ青空が広がっていた。 「私たちは、行けないもの……」 「……そうだね」  行かないのではなく、行けない。その言い回しの裏側を察するには十分なほどの羨望を感じた。  彼女の手を取って、あの船に飛び乗るような気概が自分にあれば――アタラはそんなもどかしい感傷を覚える。だが彼もまた神鳥(かんどり)の雛だ。羽耳を授かった者の責務を全うする義務がある。幼い頃からカージュでそう教え込まれてきた。  雛鳥(自分)たちは、どこにも行けない。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加