ツツジ並木の出逢い

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(どこか、落ち着いて休める場所は……)  視線を彷徨わせていると、石造りの建物が並ぶ隙間から、白とピンクの群像に手招きされた。引き寄せられるようにそちらに足を向ける。猫が昼寝をしていた狭い路地を抜けた先には、川沿いに果てなく続くツツジ並木が広がっていた。 「綺麗……」  土手から河川敷までを埋め尽くす見頃のツツジに出迎えられ、それまでの緊張感や言葉にできない心細さがすっとほぐれていく。  花の甘い香りに(いざな)われて河川敷へ降りた。人気がないのを確認して窮屈な菅笠を脱ぎ、胸の高さほどの低木の間をふらふらと歩く。  大陸の建築様式を模した大きな建物の、裏手のせせらぎ。赤と白の煉瓦(レンガ)が積み重ねられた色鮮やかな外壁の建物が何なのか、オトも心得ていた。 「総領事館の裏に、こんな場所があったなんて……」  賑やかで忙しない街から突然違う世界に迷い込んだような、不思議な感覚だった。  そんな風に心を(うわ)つかせていたのが悪かったのかもしれない。不意に何かにつまずき、ツツジ並木の中へ転倒してしまった。
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