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『夢喰が、こんなにたくさん……』
男が無防備に呟く。
それは枝葉の間に身を潜めていた黒い蝶。澄んだ空を覆い尽くす圧巻の数が、オトの声に反応して一斉に飛び上がったのだ。
一人の雛鳥が祓える夢喰の数はたかが知れている。だからこそ楽徒を組んで集団演奏をするのだ。しかしこの量は、その定説を遥かに越えている。
何が起きたのかわからず、涙を拭うことすら忘れて幻想的な空を見上げるオト。だが大声の謝罪が最後の留めになったのか、かつてないほど激しく咳き込んだ。男に背を向け、雑草に手をついて肩を上下させる。喉が内側から引き裂かれそう――そんな恐怖に襲われた。
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