想ひ歌

6/6

48人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
「ゆっくり息を吐け、過呼吸になってしまう」  震える右の羽耳へ寄せられた唇が、低く落ち着いた声を奏でる。今度は大陸語ではなく、島の言葉だった。優しく肩を叩く指先の感覚に合わせて呼吸を繰り返すと、徐々に脳へ酸素が回り出した。  冷静になった視界で恐る恐る背後を見る。そこにいたのやはり、先ほどの大陸人で。 「落ち着いたか?」 「は、い……」  近い。すぐ後ろに目鼻立ちの整った顔があった。しかも吐息がかかるほどの至近距離で、羽耳をじっくり見られている。途端に恥ずかしくなって身じろぎしたオトに、信じられない言葉がかけられた。 「綺麗な羽耳だな」 「…………!」
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加