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「ゆっくり息を吐け、過呼吸になってしまう」
震える右の羽耳へ寄せられた唇が、低く落ち着いた声を奏でる。今度は大陸語ではなく、島の言葉だった。優しく肩を叩く指先の感覚に合わせて呼吸を繰り返すと、徐々に脳へ酸素が回り出した。
冷静になった視界で恐る恐る背後を見る。そこにいたのやはり、先ほどの大陸人で。
「落ち着いたか?」
「は、い……」
近い。すぐ後ろに目鼻立ちの整った顔があった。しかも吐息がかかるほどの至近距離で、羽耳をじっくり見られている。途端に恥ずかしくなって身じろぎしたオトに、信じられない言葉がかけられた。
「綺麗な羽耳だな」
「…………!」
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