48人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
憧れの群青色
男が羽耳の根元の髪を撫でながら言うものだから、オトは勘違いしてしまいそうになる。
「綺麗じゃ、ない……」
「どうして? なぜそう思う?」
「だって、みんなが醜い片羽だって……」
アタラやメルヴィのように淡く柔らかな色の羽耳の方がセレニティに近しく、神通力も強いとされている。オトの焦げ茶色はその辺を飛ぶ野鳥と同じだ。しかも片方を失ったせいか、他より小ぶりでみすぼらしい。「綺麗」は、自分とは無縁の賛辞だ。そう信じて止まないオトは、自分とは正反対な美しい男から視線を外した。
「片方しかないから何だって言うんだ。こんなに綺麗で神秘的なのに。クレセンティアに生息する小鳥……雀のようで、可愛らしいじゃないか」
羽耳のすぐ近くに置かれた唇に褒め殺され、身体中の熱が頬に集まった。身の丈に合わない言葉の数々に「そんなことない」と身をよじる。楽徒の演奏を見たら、こんな野鳥などきっと目に入らない。
最初のコメントを投稿しよう!