憧れの群青色

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「周りのくだらない(さげす)みを鵜呑(うの)みにするくらいなら、俺の言葉もそのまま受け取っておけ。……さっきは怒鳴って悪かった。助けてくれたこと、礼を言う」 「っ……!」  歌を歌ってお礼を言われたのは、生まれて初めてだった。意思とは関係なく湧き上がる喜びで頬がじゅわっと染まる。冷たい指先が小さな下顎を掬い、噛み癖の痕が残る下唇を意味深になぞった。その一挙一動から目が離せない。 「それより、夢喰(むし)(たか)られてた俺より顔色が悪いな。喉も心配だ。職場がすぐそこなんだが、休んでいくか?」  善意の申し出だったが、オトは弱々しく首を振る。雛鳥に勝手は許されない。信徒ではない大陸人と積極的に関わろうとするなんて、もっての外だ。  すると、土手の上からオトを呼ぶ声がした。アタラだ。飛び立った夢喰(むし)の大群を見て探しに来てくれたのだろう。  ハッとしてツツジ並木から立ち上がり、リラと菅笠を抱えて男に背を向ける。 「すみません、もう行かないと……」 「待って」
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