憧れの群青色

3/6

48人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
 立ち上がった男に肩を掴まれ、ぎくりと足を止める。後ろから回された腕につけられたのは、金属の紐に指輪を通した首飾りだった。余計な装飾がない金の指輪はよく磨かれていて、普段から大切に手入れされていることがわかる。 「俺の大切なお守りなんだ。今度会いに行くから、それまで持っていてくれないか」  思わぬ提案に、つい背後を振り返ってしまう。  カージュは禁足地だ。島民でさえ踏み入ることはできない。羽耳を見たのだから、素性はとっくにわかっているだろうに。  受け取れない。とっさに外そうとしたオトの手を、アタラとは違う骨ばった男の手が包んだ。 「会いに行く、必ず」  澄んだ青の宝石にどこまでも真っ直ぐ見つめられて。オトは切なげに目を細め、無言で(きびす)を返した。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加