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初対面の大陸人。しかも横暴な態度かと思えば、急に優しくしてきたり。彼が何をしたいのか、よくわからない。
(待ってもどうせ来ないもの。だから期待なんてしないわ、絶対に)
日頃から虐げられることより、期待して傷つく方がずっと辛い。
なのに。オトが憧れる空と海の群青色を思い出しては、頬が熱くなった。首元で揺れる指輪を襟の中にしまい心を落ち着かせようとするが、鼓動は早まるばかり。おかしい。こんなのおかしい。
煩悩を振り払うように早足で土手を上がり、息を切らしたアタラと合流した。
「オト、無事か!? ……顔が赤いけど、何かあった?」
「な、何でもない、大丈夫」
オトの言う「大丈夫」ほど信用ならないものはない。痛々しいほど潰れた声に、アタラは眉を寄せる。
「夢喰の大群が飛んでいくのが見えた。あれは、オトが……?」
「そう、みたい……」
カージュにいる告鳥も、大空へ舞い上がった黒い群れに気づいているはず。オトは不安そうに視線を落とした。
「心配しないで」
「でも……」
「大丈夫だから。街中もちょっとした騒ぎになってるし、とにかくいったん帰ろう」
「……うん」
結局、雛鳥は鳥籠に帰るしかない。
東の船着き場を目指し、二人は重い足取りで歩き出した。
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