壊された音

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壊された音

 折檻殿に入れられて四日目の朝。  ようやく赦しが下り、オトはふらつきながら外へ出た。  丸三日閉じ込められた社殿の中はがらんとしている。仕置きの道具があるわけでも、中で体罰を受けるわけでもない。この建物に入ると、セレニティの力で全ての音を奪われるのだ。歌の練習をする雛鳥たちの声、外を歩く音、自分の呼吸音や服が擦れる音でさえも。無音は最恐の狂気と成り得る。初日に正気を失う者も多い。  アタラは告鳥(つげどり)に嘘の申告をしたことで、結局一日だけ共に折檻を受けた。  先に外へ出た彼はどうしているだろうか。ちゃんと謝罪をしなければ。  そんなことを考えて壁伝いに庭を歩いていたオトの頭上に、前触れなく大量の水が降りかかった。
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